例えば天下を取れる程の力がある人がいて、その人が自分の主君だったなら、これ程嬉しい事はないはず。
でもその人が望む天下が何故だか自分の望むそれとは違っていたら
…それはどうなのだろう。
主君を裏切る様な考えをもつ私が間違っているのか、私の主君が間違っているのか。
そもそも全てが間違っているのか。
考えはまとまらず、苦しいだけ。
蘭丸の様に真っ直ぐ主君を信じれたらどんなに良かったか、しかし思考を止めない私には苦痛だけが残る。
信という、義というものの難しさ。
その苦しみからほんの一時でも逃れるために私は主君の元へと行く。


「信長様、光秀です」
「入れ」

待っていた、とばかりの素早い反応に少し戸惑いながら襖を開いて中に入る。
かの人、信長は部屋の奥で窓の外を見ながら立っていた。
私の存在を確認したのか、視線がちらりとこちらに移る。


「うぬは天下を取りたいか」


いきなり思ってもみなかった問いに返事が出来ない。
弱気になったとか悩んでいるとかそういった表情ではない
…むしろ楽しんでいる。
私は試されているのだろうか。

「…それは信長様がお取りになる物です。信長様にはその力がお有りですから」
「わしの話ではない、うぬの話ぞ」
「私は…」

また私の癖が出てしまう。
何事も人以上に悩み、考えて…そして曖昧な結論がしか出ない。
だから私と正反対のこの人に忠義を誓ったのに。
私はそれさえまた悩み始めている。

「愉快だ。」
「え…?」
「また悩んでおるな、光秀。その様な事、無価値」

完璧なる思考の断絶。
私は…私には

「私には悩まぬ事など出来ないのです」

「分かっておる」

だからここへ来たのであろう?
私の事などお見通しの様だ。
私の悩みも、解決策も…そしてきっとその先まで。
2、3歩こちらに来ると、いきなり強引に私の着物の帯を外し、次の瞬間にはそれは私の手首をきつく拘束していた。

「信長様っ!?」

私の声などまるで聞く気がないらしく、そのまま床に叩き付けられる。
縛られた手のせいで受け身が取れず、衝撃をもろにくらって背が軋む。

「っつ…!信長様、何を!?」

なさるおつもりか…我ながら愚問だ。そんなものここへ来た時点で分かっている。

「うぬは痛くされたいのだろう?」

悪鬼の笑み。

「そんな事ありません」
「嘘をつくな」

帯を外されているせいで着物の前ははだけて、着物本来の意味をなしていない。
信長の手が光秀の胸までのぼり、飾りを捻る。

「はぁっ…ぃ…痛っ」
「痛いのなら逃げればよい」
「ぁあ…っ…」

そのつもりがないのを信長は分かっている。

「胸だけで感じる…淫乱な体だ。」

軽く首を擡げはじめた光秀自身を煽情的に撫で上げる。

「…ぁあ…っ…」

抵抗しようとしても手が使えない。

「抵抗などしなくてよい。
うぬは…他の事が考えられなくなる程の痛みを望んでおろう?」

撫で上げたそれを足できつく踏み付ける。

「くぁ…ああっ…ぁんっ」

痛みに体が跳ね上がり、信長と目が合う。
絶対的強者が弱者をいたぶる目。直視に耐え難くて慌てて目をそらした。
それとも、信長の目に写る自分の痴態に目を反らせたかった…のかもしれない。

「その様な思考、捨てろ」

そう言ったかと思うと、急な口付け。
迷わず口腔内に侵入してきて喉の方ではじけた…何か…飲まされた?
急いで口をはがそうとするもやはり手がつかえず、歯列をなぞられればぞくりとなってそんな気も失せた。
ただ口付けのいやらしい水音だけが部屋に響くのが嫌で、畳に足を打ち付けてその音を消そうとする。
すると信長は口を離してその足を押さえ、後孔に何かを無理やり押し込んだ。

「痛っ…っぁ…ぁあ!?」

信長は離れているのに、全身が疼く。
身体に言い様のない熱が籠って、自分の息遣いに感じる様になっている。

「効いてきたか?」
「あぁっ…はぁん…んっ」

息遣いで感じるのだから声なんてさらに感じてしまう。
にしても効いてきたかと言う事は。

「さっき…飲まされた…ぁぁっ…ぁんっ…ぃゃっ…やぁぁっ…イ…くぅっっ」

白濁が自分の腹にくる事を覚悟していたのに、それは信長の口の中へ。

「信長…さま…?」

信じられない主の行動に目を見張ると、またもやいきなりの口付け。

「んっ!」

苦い。口移しで自分のものを飲ませられて気持ち悪さに顔が歪む。

「信長様っ…ぁっ」

今イったばかりだと言うのにまだ光秀自身は首を上げている。

「ぅ…そ……っ…はぁっ」

その事実を否定しようと首を振るも、身体の動きは確実に光秀を攻めていく。

「信長様っ!さっき私が飲ませられたのはっ…ぁっ…な…にっ…ぃぁっ…」
「媚薬、ぞ」

にやりと立ち上がって全身を舐め回すように見る。
まだ信長は着物一つ脱いではいないのだ。
それに対して光秀は、腕のあたりで止まった着流し以外は何もつけてない。
自らの動きで、声で、感じ喘ぐ姿はいつもの優しく静かな彼の姿からは想像も出来ない程淫らだった。

「淫乱よな、光秀」
「しゃ…べらない…でぇっ…ぃあ…はぁぁんっっ」
「うぬのこの姿、別の誰かにも見せたいと思わぬか」
「思わ…ぁっ…なぃっ…はぁぁっっ!!」

光秀が達しようとすると、信長がまた足で踏み付けてそれを止めた。

「部屋をあまり汚すな」

そう言って光秀の髪を結っていた紐を外し、光秀自身をきつく縛る。

「やめ…っ…てぇ…」

切なげに身を揺らして涙を流すも信長は無視。
それどころか「うぬが暴れると畳が痛む」と顔をしかめて光秀の髪を掴み、適当な梁へと引きずる。

「…っっ痛…何を…」
「うぬは縛られるのが好きであろう?」
「…そんな事なぃっ…痛っ」

ばしんと梁に叩き付けると、手を縛った紐を一旦取って梁に回し、また縛る。
梁に腰掛けた状態のまま動けなくなった。

「はぁ…んっ…」

解放されない己の熱を冷まそうと必死になるが、信長が片っ端から愛撫を与えていくので逆に熱は籠っていく。

「はぁ…っぁ…ああっ…の…ぶ」
「光秀、楽になりたいか?なら、求めればよい」

信長にただ欲しい、と一言言えば。
だが何故だかそれだけは言いたくなくて、最後の砦の様で。
でももうそんな事言っていられない。

「信長様…ぃ……れっ…!?」

誰かが見ている!

障子と障子の僅かな隙間から見ている目と、私の目があう。
あれは…まさか蘭丸。

「信長様っ、外に…っぁ…人がぁ…ぁん」
「…人?お蘭か…入れ」
「何をっ…」

今人をいれると言う事は、当たり前だが、私のこの痴態を見せる羽目になる。
しかもその人というのが蘭丸なぞ、何としてでも避けたい。

「入れ、お蘭」
「やだっ…やめ…てぇ」

首をふって抵抗するも首に痕をつけられて終わる。

「…入ります…」

普段の格好のままの蘭丸が入って来た。

「信長様、御報告があります…」

目のやりどころに困っている。

「良い、申せ」

信長は言っている間も光秀に愛撫する事をやめようとしない。

「はい」

結局俯く事に決めた様だ。

「どうやら光秀様が」

私の身体がびくんとなる。
蘭丸の口から私の名が出ただけで霧消に何か沸き立つものがあった。

「光秀様が謀反を企てている…という噂が」

まさか、その様な事考えてもいないし誰にも話した記憶もない。

「…ほぅ。光秀、詳しく述べてもらおうか?」
「そん…な…っ…んぁっ…事実無根…ですっ…はぁっ」

喘ぎ声が入って真実味がないな、と自分では思ったのだが、信長にはそれで良いらしかった。
それよりも、


「光秀様!?」


どうやら今まで私だと気付いていなかったらしい蘭丸が、私の存在に気付いてしまった事の方が問題だ。

「気付いていなかったのか」
「はい…女の人…だと思っていました」

くすりと笑って信長が私の前から退く。蘭丸に私の身体を見られるのが、信長に見られるのの何倍も嫌だった。

「み…ないで…下さい」

視線が、軽蔑の視線が刺さる。

「お蘭、見てやれ。光秀は普通は嫌な事程良いのだ」
「え…?」

怪訝な面持ちで私に答えを求めてくる。

「そんな…っ…嘘…です」
「嘘なものか。それではこれは何だ」
「ふぁっ…ああっ」

胸の飾りが捩じられる。
痛くて、でも感じてしまう。

「こちらも、な」
「やだっ…やぁ…ぁ」

光秀自身に触れられれば、今はもうそれだけで極上の愛撫だった。
もう、限界。

「信長様っ…ぃれ…て…っ逝か…せてっ・・・下さっ」

背徳感よりも、理性よりも、蘭丸がいるという事よりも、欲望が勝った。

「墜ちたな、光秀」

まさにそう、思う。私は墜ちたのだ。
後孔に信長が打ち込まれる。
光秀のそこは、待っていたかの様に信長を受け入れた。

「あああっ…ぁっ…はぁっ」

激しく打ち付けられれば自然と腰が揺れる。

「お蘭、気分が悪かろう?下がってよい」
「…っ、失礼します」

信長と蘭丸の会話も光秀にはもう聞こえない。
今はただ、自分の内を突く激しい熱に従うだけ。

「ぁんっ…そっ…こ…っ」

そこがイイ、と自ら腰を動かしてくる。
信長は光秀の変貌をおかしそうに見つめていた。
急に光秀の戒めが解かれる。

「くぁっ…ああああっ!」

白濁した液体が広がると、光秀は気を失った。
信長も光秀の中で達すると、後始末をするべく立ち上がる。




まだ、光秀が信長に従ううちは謀反など起こさない。
しかし、きっとそれは今の内だけだ。近いうちにこの悩める若者は信長を裏切る。
その事が手にとるように分かった。


「光秀、うぬは信長を楽しませてくれるか」


気を失っている美麗な顔に嘲笑を吹き掛ける。
汚れさえも楽しむその顔。


「その時はまた、信長が愛でてやろうぞ」


所詮、悩めるうちはこの信長の手中にあるのと変わらない。

例え若者が信長を討とうとも。




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なんだか純情っぽく書いちゃったけど、蘭丸は黒い子ってのも大いに有り得ると思う。
そして無双キャラは皆口調が分かりにくいね。





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