古の、今は亡き王国。
砂塵の中に残されしその軌跡をここに記す。





元年  男、己が手に剣を持ちて立てり。
大なりし帝国に牙を剥き、離反。
泉湧き出づる小さき緑の街に拠りて、初代国王とさきわえり。
そのかむりに金色の栄冠を受く。




三十年  二代目国王、即位。
その者、初代国王が長子、齢二十余三の知恵者なり。




五十一年  初代国王、逝去。享年七十一。




六十三年  三代目国王、即位。
その者、二代国王が長子、齢二十余二の偉丈夫なり。




六十四年  泉の祝福を受けし国、その方の日の出づる地、帝国にして西端を攻む。
力満ちて彼の地を擁せば、されど返りの風は鋭くその身を苛めり。




六十五年  君が司徒、謀反をおこさしむる。
はらから、意志を継ぎて彼の咎人が位を受くる。




六十六年  争い地に満ちて火は猛り。
勇ましき君のまなこ、かいな、剣を取りて闘いその身に祝福を受くる。
王、その盾を強めんとす。




六十八年  二代目国王、逝去。享年六十一。




七十一年  苦難、太刀風の姿を取りて降りかかる。
砂塵烈風女神が裾を裂き、大なりし帝国その牙を剥かんとす。
細やかな傷に毒を孕み、帝国爪を研ぎ大いなる道を奪えり。
甘露の恵み干上がりて、女神その困窮に喘ぐ。




七十二年  紅蓮の風巻き、女神はその息を吹き返さん。
帝国が爪その鋭さを失いて、天より竪琴の糸降り落つ。




七十三年  女神の息吹きは途絶え、彼の祝福を損なえり。
帝国がまなこ、喘鳴を捉え、その顎女神が喉笛を食いちぎらん。
悲しみ天を多い、夢やがて眠る。












制作協力:梵

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